船舶レーダによる機動的火山噴火監視技術の確立と火山防災への利用

Mobile Monitoring of Volcanic Eruption with Marine Radar and Its Application to Volcano Disaster Prevention

基本情報

京大防災研 一般共同研究 30G-01

機関:2018年4月1日~2020年3月31日

予算:1,530千円(2018年度)1,530千円(2019年度)

目的

近年,北大の藤吉とFRS(Field Researches corporation)の徳島は船舶レーダのアンテナを縦に回転させることで,落下する降水粒子や鳥の移動を1.25秒間隔という時間間隔で捕らえることに成功した.彼らの結果は船舶レーダを気象現象だけではなく噴火現象にも利用できることを示唆するものである.実際,鹿児島では桜島フェリーの船長が海上の降灰を船舶レーダで観測している.ただし,船舶レーダの問題点はビーム幅の広さから定量的な観測が困難な点である.本研究では研究用の気象レーダによる同時観測を通じて船舶レーダによる定量的降灰量推定アルゴリズムを開発し,これにより低価格で高時間分解能を有する船舶レーダを利用した火山噴火の機動的監視技術を確立することを目的とする.

意義

安全運航に利用されている船舶レーダが大規模噴火時の降灰や火砕流の発生の監視にも利用できることが実証されれば,低価格(百万円程度)の噴火監視技術として火山防災に活用することができる.これまで高価(数千万円)な研究用気象レーダでも捉えることが困難であった火山礫や火山岩などの降下火砕物の検出,噴煙柱の崩壊に伴って発生する火砕流の監視が可能となる.また,小型で機動性に優れた船舶レーダは離島などの火山噴火に迅速に対応できる.

安全運航に利用されている船舶レーダが大規模噴火時の降灰や火砕流の発生の監視にも利用できることが実証されれば,低価格(百万円程度)の噴火監視技術として火山防災に活用することができる.これまで高価(数千万円)な研究用気象レーダでも捉えることが困難であった火山礫や火山岩などの降下火砕物の検出,噴煙柱の崩壊に伴って発生する火砕流の監視が可能となる.また,小型で機動性に優れた船舶レーダは離島などの火山噴火に迅速に対応できる.

研究計画

課題1 船舶レーダによる降灰観測事例の調査(鹿児島大)

 

船舶レーダによる桜島および口永良部島火山噴火の観測例について,桜島フェリー(鹿児島市),垂水フェリー(いわさきコーポレーション),太陽フェリー(屋久島町)などを対象にアンケート調査を実施する. 

 

課題2 機動的降灰観測実験(北海道大学・FRS・京大防災研・気象研・鹿児島大学)

 

2-1 船舶レーダによる降灰観測(北海道大学・FRS)

1年目は桜島火山を対象にFRSの可搬型船舶レーダ(写真1)を桜島に設置し,火口直上の噴煙柱の機動的観測を実施する.噴火が発生しない場合も想定して,セスナ機により上空から火山灰・礫を投下し,船舶レーダによる検出実験をおこなう.

2年目は北大所有の船舶レーダを桜島京大防災研の黒神観測所に設置し,噴煙柱の通年観測を実施する.また,水産学部の船舶レーダ(写真2)を改良し降灰のPPI観測を実施して降灰の水平分布を求める.なお,北大の船舶レーダの桜島への移設,鹿児島大学の船舶レーダの改造はマッチングファンド(鹿児島大)で実施する.

 

2-2 既存の気象レーダによる観測(京都大学防災研究所・気象研究所・鹿児島大学)

小型XバンドMPレーダ(京大防災研),Kuバンドレーダ(気象研,鹿児島大学)による観測を実施し船舶レーダの降灰観測精度の検証をおこなう.検証には鹿児島大学で開発された3次元気象レーダデータ解析ツール(ANT3D)を使用する.

 

課題3 火山防災への利用(日本無線・光電製作所・日本気象協会・鹿児島大学)

 

3-1 火山噴火情報のリアルタイム配信実験(気象協会・鹿児島大学)

 船舶レーダで得られた火山噴火情報(噴火時刻,噴煙高度,降灰量など)をリアルタイムで配信し,火山防災への船舶レーダ情報の有効性を検証する.検証は,鹿児島地方気象台,国土交通省大隅河川国道管理事務所,鹿児島県,鹿児島市,垂水市などと連携して行う.

 

3-2 船舶レーダを活用した大規模火山噴火時の降灰観測技術の高度化(日本無線・光電製作所・鹿児島大学)

 課題1と課題2での結果を踏まえて,より実用的な降灰監視技術の検討をハード面からおこなう.具体的には送信機の固体素子化,噴煙や降灰の検出に適した信号処理技術の検討やネットワーク化が中心となる.

研究成果

共同研究参加者数:  名 (所外 11名、所内 0 名)

・大学院生の参加状況:2 名(修士 1名、博士 1名)(内数)

・大学院生の参加形態 [鹿大社会人博士課程の学生は,当人の研究テーマの一部として噴煙高度の推定手法の開発を担当している.鹿大修士学生は一時的な協力者として降灰量推定式アルゴリズムの検証に参加している]

 

平成 30 年度 実施状況

FRSの船舶レーダを京大桜島黒神観測点に設置し,2018年4月から約50日間,噴煙柱の連続観測を実施し,計229の噴火事例データを取得し,全事例のレーダエコー動画を作成した.動画の解析から,95事例については噴火と同時に飛散する噴石が認められた.また,爆発的な噴火事例では噴煙高度の時間変化を約1秒毎に捉えることに成功した.更に,弱い降雨時の噴火も複数例ではあるが検出できた.取得したデータの定量的解析の為に,船舶レーダによる噴火の自動検出プログラムおよび噴煙柱高度の推定プログラムのプロトタイプを作成した.結果の一部は日本火山学会や日本気象学会で発表するとともに,開発した噴火の自動検出アルゴリズムの特許申請の可能性を検討した.平成30年度の観測結果は船舶レーダによる機動観測の有効性を示すものである.本共同研究が目標とした火山防災への船舶レーダの実用化が見込まれることから,内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)課題「国家レジリエンス(防災・減殺)の強化」へ申請し認められた.

 

令和 元 年度 実施計画

定量的降灰量推定手法の確立のために,FRSと北大の船舶レーダによる桜島噴煙観測の実施,高度1000mからの既知サイズの火山礫の投下実験,パーシベルによる地上降灰粒子の測定,気象研究所Kuバンドレーダとの比較観測を実施する,.また,船舶レーダの火山防災への実利用のために,桜島フェリー,垂水フェリー等のフェリー運航会社を対象に,過去の顕著な桜島噴火観測実績についてアンケート調査を実施する.