気象庁によれば、急に強く降り、数十分の短時間に狭い範囲に数十mm程度の雨量をもたらす雨を「局地的大雨」と呼び、狭い範囲に数時間にわたり強く降り、100mmから数百mmの雨量をもたらす雨を「集中豪雨」と呼んでいる。局地的大雨と集中豪雨の違いは、前者が単独の積乱雲が発達することによって起きるのに対して、後者は積乱雲が同じ場所で次々と発生・発達を繰り返すことにより起きる。気象庁ではゲリラ豪雨という名前を使わないようにすすめている。
気候変動レポート2012(気象庁)によれば、1時間に50mmを超える雨の回数はここ30年間の10年毎の平均値を見ると1980年代には約180回/1000地点だったのが、1990年代には約200回/1000地点、2000年代には約220回と増加している(年21.9回/1000地点の割合で増加)。また、1時間に80mm以上の雨についても約12回/1000地点(1980年代)から、14回/1000地点(1990年代)、16回/1000地点(2000年代)と、約2回/1000地点の割合で増加している。最近、藤部(気象庁)の解析結果からは10分間雨量についても1980年から増加傾向にあり、平均気温の上昇との対応が見られる。気象庁の気候モデルによる21世紀末の計算結果によれば、1時間降水量が50ミリ以上の短時間強雨の発生回数は、全国的に増加すると予測されている(「地球温暖化予測情報第8巻」)。80mm以上の雨については東日本、西日本、沖縄・奄美の一部で増加、それ以外は不明瞭との結果が出ている。
気象庁が発表する雨についての情報には、「大雨に関する情報」、「大雨警報」、「記録的短時間大雨情報」、「土砂災害警戒情報」、「大雨特別警報」と多くあり、一言で言うと,一般の人にはわかりづらい情報になっている.まず,「大雨注意報」、「大雨警報」、「大雨特別警報」はそれぞれおどのように違うのか?気象庁によれば、
・「大雨注意報」「大雨警報」:市町村単位で出される.区域によって基準が違う.例えば,鹿児島市・姶良市だと40mm/h(注意報),70mm/h(警報),奄美市・徳之島町では70mm/h(注意報),110mm/h(警報)である.
・「記録的短時間大雨情報」:大雨警報発表時に、観測点または市町村単位で出される情報.現在の降雨がその地域にとって災害の発生につながるような、稀にしか観測しない雨量であることを知らせるために発表される.数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨を観測した時に各地の気象台が発表する.具体的には、1時間雨量歴代1位または2位の記録を参考に、概ね府県予報区ごとに定めた基準雨量により決定.鹿児島県では120mmm/h.
・「大雨特別警報」:台風や集中豪雨により数十年に一度の降雨量となる大雨が予想され、若しくは、数十年 に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により大雨になると予想される場合で,具体的には次の①または②の条件が満たされ.かつ雨が降り続くと予測される場合.
① 48時間降水量及び土壌雨量指数において、50年に一度の値以上となった5km格子が、共に府県程度の広がりの範囲内で50格子以上出現(1格子は5km).鹿児島市だと約500mm,奄美市だと約700mm.
② 3時間降水量及び土壌雨量指数において、50年に一度の値以上となった5km格子が、共に府県程度の広がりの範囲内で10格子以上出現(ただし、3時間降水量が150mm以上となった格子のみを対象とする)。鹿児島市だと約170mm,奄美市だと約200mm
・「土砂災害警戒情報」:大雨警報が発表されている状況で、土砂災害発生の危険度が高まったときに、都道府県と気象庁が共同で対象となる市町村を特定して発表する。市町村長の避難勧告等の判断の支援、住民の自主避難の参考情報として利用される.
局地的大雨は発達した積乱雲によりもたらされる。積乱雲は上空に寒気があり、下層に湿った空気があるような時に、何らかの原因で地表付近の空気が上昇させられることにより発達する。この上昇流の理由としては、地表面の空気が日射により暖められることや前線などにより強制的に上昇させさられることなどがある。
積乱雲の発生予測:従来の観測技術では予測が困難と言われてきた。その理由は、従来の気象観測網は6時間先から数日後の天気予報のために設計されたものであり、局所的に急発達する積乱雲を十分に捉えきれないからである。しかしながら、近年、高時空間分解能を持った新たな観測システムが実用化されてきた。例えば、2013年から実運用が開始された国交省のXRAIN(Xバンドマルチパラメータレーダネットワーク)は、1分間隔、250mの分解能を持った雨量情報を提供している。又、気象庁の静止気象衛星ひまわりはラピッドスキャン機能が課され2.5分間毎の可視画像を見る事ができるよになってきた。さらに、最近、GPSネットワークから得られる水蒸気の情報がゲリラ豪雨の予測に役に立つという研究成果も出てきている。これらの新たな情報は、これまで困難とされていたゲリラ豪雨の発生予測を可能にするかも知れない。研究面では、次世代の観測機器としてフェーズドアレイレーダやマルチセンシング技術(Kaバンドレーダ、ライダー、マイクロ波放射計)、Kuバンドレーダが開発され研究が進められている。
逃げる、隠れるが基本。そのためには、極端気象に対する正しい知識をもっていることと、現状を把握するための情報を入手することが大事である。
積乱雲に伴う現象として、豪雨、落雷、竜巻、ダウンバーストなどがある。都市における豪雨は都市型水害を引き起こす。落雷は交通機関や通信などの都市機能を麻痺させる。落雷は対処を誤れば人的被害につながる。竜巻はその破壊力で家屋を破壊し人命の脅威となる。ダウンバーストは特に航空機の離発着時の事故の脅威である。これらの対策としてハード面とソフト面の対策がとられる。ハード面では地下空間の強大な貯水池で内水氾濫を引き起こしにくくすることが国交省や東京都、横浜市などでとられている。効果的ではあるが、莫大な費用がかかるし時間100mmを超す雨には必ずしも対応仕切れないこともある。被害を最小限にするためにはハード面に加えてソフト面の対策も重要になってくる。期待されている情報としてXRAINの降雨情報や強風情報がある。